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      民主党政権のエコ・エネ政策を数え歌に
                    (2009年12月中旬)


 鳩山政権の発足以来、民主党マニフェストに盛られた政策項目の実行や棚上げをめぐる動きが、連日ニュースになっている。世間の関心を集めている政策分野は幾つもあるけれど、エネルギー政策がその重要な一つであるのは論を待たない。エネルギー問題については環境問題との一体的な解決が時代の要請となっているという事情を思えば、環境・エネルギー政策(エコ・エネ政策)として一括りにしても構わないのだろうが、私は今この分野に特に関心を寄せている。
 9月半ばの閣議で、政府は、前政権下で本年5月に始まったエコポイント制度とエコカー(環境適応車)買い替え補助制度の実施期限を、2010年末まで延長する(当初予定は3月末)方針を固めた。エコポイントに関しては、大型電気製品への買い替え需要を煽って省エネならぬ増エネをもたらすとの指摘もあるのに、景気対策としての即効性が重視された形だ。エコカーの場合には、購入補助金だけでなく、前後して従量税・取得税の減免措置(エコカー減税)も始まっており、それらの相乗効果による需要拡大、景気と環境に対する大きなプラス効果が期待されている。ただし、需要の先食いが将来に及ぼす悪影響を心配する声も聞こえてくる。
 税制面では、マニフェストどおりにガソリン暫定税率の撤廃が断行されるのかどうかが、大問題となっている。景気刺激にはガソリン価格を1リットルあたり25円低下させる暫定税率撤廃が有効だが、その場合には国と地方を合わせて2.5兆円もの税収が失われることになる。また、その施策はガソリン消費を促す要因にならずにはおかず、温暖化抑制の精神にも反している(ほかに高速道路無料化の方針も基本精神違反のそしりを免れない)。将来的には地球温暖化対策税(環境税)の創設が目指されているが、その具体的な内容も、暫定税率廃止からそこに至る道程も、まだ明示されていない。
 エネルギー安保を増進し、経済成長と温暖化抑制の両立をはかるためのエネルギー政策の柱と目されているのが、原子力利用の拡大であり、それを可能にする再処理技術の確立にほかならない。再処理も含めて、本当に万全な安全確保体制が築かれると安心してよいのだろうか。
 風力、太陽、バイオマスなど再生可能エネルギーの利用を促進し、1次エネルギー総供給に占める割合を2020年までに10%程度にする目標も掲げられている。再生エネルギーの普及をはかる一手段として、家庭が太陽光や風力で発電した電力をそっくり電力会社に買い取らせる制度の早期導入が考えられているが、発電装置をもたない世帯は、買い取り費用の電力料金への転嫁によって負担増を強いられることになるだろう。また、10%目標は、今のところ政策的な裏付けを欠いた希望表明の域を出ていないようにみえる。
 鳩山新政権が高らかにうたう友愛社会の理念は、「国民の生活が第一」とするもので、環境と福祉に重きを置いている。となると、環境・福祉関連の支出や投資が経済成長の新機軸となりえてこそ友愛社会も持続性をもちうる、との認識にならざるをえない。政府もその観点に立って、エコ・エネ政策を新産業育成・雇用活性化のバネにする立場を鮮明にしてはいる。しかし、その可能性はまだ科学的に論証されているとは言い難い。なお、当面のエコ・エネ政策の遂行は、財政が歴史的な大赤字に陥っている関係で、予算全体の編成替えの動向によって強く規定される形になる。ところが、肝心の新しい優先順位に基づく予算の組み替えが、なんとも先行き不透明で。
 温暖化抑制の国際協調もまた五里霧中。いま開催されているCOP15(国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議)でも、目を覆いたくなるような各国の国益の衝突劇が演じられている。まともな合意への到達に向けて、今こそ鳩山イニシアティブを力強く発揮してもらいたいと願う。
 以上に述べた私の思いを数え歌にしてみた。                                 
 一つとせ 広くもない部屋大型テレビ 増エネもありエコポイント制
         景気に良いと延長か
 二つとせ 普及を後押しエコカー減税 需要の先食い心配だけど
        やめりゃ景気に悪影響
 三つとせ 未来の姿は環境税か まずはガソリン税率を
        維持する・しないの前騒ぎ
 四つとせ よさぬばかりか積極推進 原発頼みのエネ安保
        安全・再処理気にかかる
 五つとせ 意地でもやります票のため CO2(二酸化炭素)を撒き散らし
        高速無料化突っ走る
 六つとせ 無限の資源だ再生エナジー 太陽・地熱に風と波
        新エネ技術に本腰を
 七つとせ なんと全量買取りだとか 家でつくった太陽電力
        装置がなければ負担増
 八つとせ 野心的です友愛社会 エコと福祉を重視する
        成長の道明示せよ
 九つとせ 国際協調と言うけれど COPの嵐が吹き荒れる
        今ぞ出番だ鳩山イニシア
 十とせ とうの昔に大赤字 エコ・エネ政策裏付ける
        予算の組み替え五里霧中


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